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プロジェクトの新しい成功の基準

PM学会の基調講演資料が面白かった。 かつてはプロジェクトマネジメントが比較的身近な環境にいたものの、今ではかなり遠くなってしまったので、時々こうした外部団体の資料を見ているのだけれど、流し見していたら少し気になることが書いてあった。

成功の定義を再考する 従来の成功定義 「鉄の三角形」 では、 もはや十分ではない これまで、プロジェクトの成功は主に「スコープ、時間、予算」という3つの制約を満たすかどうかで測られてきた。 しかし、熾烈な競争、 不安定な規制、 そして急速な技術革新が渦巻く現代において、 この実行中心の指標だけでは、プロジェクトが真にもたらすべき価値を捉えることはできない。3つの制約を満たすことだけでプロジェクトを評価することは、もはや現代の世界では完全には通用しない。1

アジャイル開発での文脈でもよく登場するスコープ、時間、予算という「鉄の三角形」に触れていた。(恥ずかしながら、これら三つを同時に変動的なものにすることはできないということを示す三角形は何度も見てきたけれど、「鉄の三角形」という名前がついているのは初めて知った)

それでは何を成功との定義としようとするのかといえば、それは価値です、と。

プロジェクト成功の定義 費やした労力と費用に見合う価値を提供したこと。 (Delivered value that was worth the effort and expense.)2

鉄の三角形(=実行の成功を測る指標)だけでは不十分で、価値(=成果の成功を測る指標)も両立する必要がある、というのが普遍的な理解となりつつあるらしい。 その上で、NPSSで測るのが一つの方法であり、回答者は経営者層やPM、PMOだけに留まらず、「意図された受益者」を含んだ360度の視点が必要だと言われている。(しかも意図された受益者からの評価がどの役割よりも成功に対する指標への2倍の影響力を持つべきという提言)

その上で、プロジェクトマネジャーの責務は、実行(プロジェクトマネジメントの成功)に責任を持つだけではなくて価値全体(プロジェクト全体の成功)に責任を持つのだ、と。

この講演はあくまでPM職関係者向けのもので、PMという仕事の価値を向上させることが念頭にあるので、一般的な言説に照らすと、少し拡大気味に責任を取りに行っていて役割の価値を増やそうとしているなあと思う。(そして同じような傾向はPMに限らず、例えばITアーキテクト系の書籍や講演でも見受けられる)

とはいえ、計画してその通りに実行することで成果を出す、と言うアプローチでうまくいく事例の領域はどんどん限定されてきていると言うのは肌感覚としても思うところなので、価値の視点も取り入れて両立させよう、その方法の一つとしてNPSSなんでどうでしょうか、というのはなかなか面白い出発点だなと思った。

  1. 中谷公巳. “持続と進化の要諦- レジリエンスと複雑適応系が描くプロジェクトマネジメントの新展望.” 2026年新春PMセミナ基調講演資料, 2026, 17. https://spm.or.jp/secure/backnumber2/view.php?id=427&category=5. ↩︎

  2. 中谷公巳. “持続と進化の要諦- レジリエンスと複雑適応系が描くプロジェクトマネジメントの新展望.” 2026年新春PMセミナ基調講演資料, 2026, 22. https://spm.or.jp/secure/backnumber2/view.php?id=427&category=5. ↩︎